13年間の龍神村での暮らし、そして旅立ちへ

Writen by さとこさん

龍神村での暮らしの中で、よく目にするのは、三世代で暮らす家族の姿。おじいちゃんやおばあちゃんが孫と笑い合う光景は、どこか温かく、心を和ませてくれます。

そんな日常の中で、ふと気づいたのです。—— 「うちの子どもたちが祖父母と会えるのは、たった年に2回しかないんだ」 そう思った瞬間、胸にぽっかりと穴が開いたような気がしました。

子どもが子どもでいられる時間は、あっという間に過ぎていきます。祖父母もまた、少しずつ年を重ねていきます。その限られた時間の中で、もっと一緒に過ごせたらどんなに素敵だろう。もっとたくさんの思い出を作りたい。私自身も、親と過ごす時間を大切にしたい——。

そんな想いが少しずつ心の中で大きくなり、やがて「埼玉に帰ろう」という決意へとつながっていったのです。

2025年3月。私たち家族は龍神村を離れます。

残り1ヶ月——ついにカウントダウンが始まりました。

「ヤダ、さみしくなるやん。」
「ほんまにいなくなるんか?信じられへん。」
「龍神に来る時は、うちに泊まってええで。」
「もう、たなごこちが読めんくなるやん!」

そう涙目で言ってくれる友達がいることが、本当にありがたくて、胸がいっぱいになります。

東京から龍神村へ移住して13年。
最初は、不安ばかりでした。
友達はできるのかな?居場所は見つかるのかな?方言も分からないし、うまくやっていけるのかな……?
そんな手探りの日々を過ごしていた私に、今の私が声をかけるとしたら、こう言いたい。
「大丈夫。心から別れを惜しんでくれる友達が、たーーーーくさんできるよ。」

龍神村で過ごした日々は、私たちにとってかけがえのない時間でした。
この村で出会った人たちとのご縁、四季折々の美しい風景、そしてここでの暮らしのすべて——
それらはこれからもずっと、私たち家族の心の中で輝き続ける宝物です。

龍神の皆様、田辺の皆様、そして「たなごこち」の読者の皆様、5年間本当にありがとうございました。

この記事を書いた人

さとこさん

埼玉県出身。3年間の海外生活以外は実家を出たことがない。 子供英会話講師など英語に関わる仕事を続けて、友人の紹介でテレビ番組の翻訳業務に就き、テレビディレクターである今の夫と結婚。東京でのママ生活を満喫していた。ところが、2012年夏、夫の「龍神村へ移住したい」の一声で当時2歳の息子と3人の移住決定。今は長女にも恵まれ、親族も友達もいなかった関西の、しかも山奥での私の暮らしが続いている。