数々の妖怪伝説、でも一番怖いのは!
毎日暑い日が続いていますね。 こんな時は、ちょっぴり涼しくなる“怖い話”でも…と思い、大塔地区に伝わる妖怪伝説をご紹介します。 (あまり怖くないので、最後までぜひ読んでくださいね?) 大塔地区は、紀伊山地の深い山々に囲まれた静かな地域で、古くから自然への畏敬と信仰が息づいています。ここには、住民たちの記憶とともに語り継がれてきた妖怪の伝説があります。
まずは、旧富里村(現・大塔地区)に伝わる民間伝承から。怨霊や祟りといった概念が色濃く残るお話です。
・「新助谷の祟り」伝説 昔、新助という医者が村の娘と親しくなったことで、村人たちの怒りを買い、逃げる途中に谷で命を落としてしまいました。 その谷は「新助谷」と呼ばれ、草を刈ると祟りがあると恐れられるようになったそうです。 人間関係のもつれが妖怪の伝説となったお話ですが、谷の草を刈ると祟りがあるという言い伝えは、土地の保全や禁忌の教えとして残されたものかもしれません。

・黒い大蛇「モリトウさん」伝説 大塔地区・合川に伝わる話です。頭に角を持つ黒い大蛇で、川の主とも言われています。 この大蛇は年に一度、海へ降りて身を清めるそうです。 なんと、村人を驚かせないように人に化けて川岸を歩いて帰ってくるのだとか。 その優しさから「さん」付けで呼ばれ、「森のお父さん」に由来して“モリトウさん”と親しまれています。 この妖怪は、恐怖の対象というよりも、自然と共存する神秘的な存在として語られ、村の暮らしを見守る精霊のような存在となっています。


この他にも、「一本ダタラ(いっぽんだたら)」「肉吸い(にくすい)」「サトリとコダマ」「ダル神」など、数々の伝説が残されています。 それらに共通するのは、紀伊山地という深い自然の中で、未知と危険が隣り合わせの生活の中から生まれた妖怪や神霊の存在です。 自然への畏敬に加え、村の掟や戒めを語り継ぐための知恵でもあったのでしょう。
でも本当に怖いのは――地域の過疎化により、こうした文化が失われていくことかもしれません。 人々の暮らしの中で生まれ、語り継がれてきた物語の灯が、今まさに途絶えようとしているのです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!