移住十一年、季節とともに暮らす幸せ

Writen by 杉原 功修さん

 移住してから、今年で十一年目になりました。この山あいでの暮らしは、都会にいた頃には想像もしなかったほど季節の移ろいが身近で、自然の変化がそのまま日々の心の動きにつながっていきます。振り返れば本当に色々なことがありましたが、笑われるかもしれませんが….問題が起きるたびに、なぜか相談してしまう存在がありました。それが、庭に立つ一本の渋柿の木です。

 柿には「表年」と「裏年」があり、実のなり方には大きな波があります。移住した当初はその仕組みも知らず、毎年の違いに一喜一憂していました。しかし十年という時間を共に過ごすうちに、柿の木のリズムが、まるでこの土地の呼吸のように感じられるようになりました。そんな中でも昨年は驚くほどの豊作で、これまでで一番多くの実をつけてくれました。枝がしなるほどの重みを見ると、「今年は頑張ったね」と声をかけたくなるほどでした。

 これまでも渋柿を使って、干し柿はもちろん、柿プリンやケーキなどさまざまなものを作り、楽しんできました。しかし昨年の豊作をきっかけに、初めて「柿酢」づくりに挑戦してみました。熟した渋柿を丁寧に仕込み、ゆっくりと発酵を待つ時間は、まるで自分自身の心を整えるような静けさがあります。出来上がった柿酢は驚くほどフレッシュで、香りも味わいも力強く、自然の恵みそのものをいただいているような感覚でした。

 この柿酢の爽やかさに触れたとき、ふと「今年はまた新しい気持ちで、この山奥の暮らしを楽しんでいこう」と思いました。自然はいつも同じように見えて、実は毎年違う表情を見せてくれます。人の暮らしも同じで、十年経ってもまだ新しい発見があり、心が動く瞬間があります。

 移住は決して楽なことばかりではありませんが、こうした小さな喜びや驚きが積み重なり、気づけば「ここで生きていきたい」と思える場所になっていきます。庭の柿の木が教えてくれたのは、自然と共に暮らす豊かさと、ゆっくりと根を張る時間の大切さでした。これからもこの土地で、季節とともに歩んでいきたいと思います。

最後まで読んで頂いてありがとうございます。

この記事を書いた人

杉原 功修さん

大阪八尾市から移住して3年になるUターン組です。畑仕事を中心に趣味の帆船模型作り、アマチュア無線、真空管ラジオ・アンプ作りと田舎生活を満喫しています。暮らしを中心に田舎の良さをお伝え出来ればと思います。