私にとっての熊野古道の魅力 ~前編~
自己紹介でもあるように、熊野古道が好きで移住してきたと言っていますが、それだけに聞かれる「熊野古道のどこがそんなに好きなの?」と言う内容について今回は書きたいと思います。
まず先に書きますが、熊野古道に連なる歴史に私は全く興味がありませんでした。住んでみて、いろいろ教わって、最近やっと面白いなと思っているぐらいです。
じゃぁなんで好きなのだろう…
今思うと、たぶん下記の道中で熊野が『蘇りの地』である体験を自分がしたからだと思います。
私が熊野古道に初めて来たのは12年前くらいに新宮から本宮大社を目指したのが最初です。
その時来た理由が、ニュージーランドのトレッキングルートを歩きに行くための練習で、まずは装備品を買って国内を歩こうという、しょうもない理由で来ました。
そして国内で熊野古道を選んだ理由も、理由です。
中学生ぐらいの頃好きだったとある漫画で、熊野古道及び熊野について触れており(だいぶファンタジーな漫画ですが)、熊野が実際にあることすら知らぬまま、大好きで読んでいました。
その後、世界遺産に登録になったことで、実際に国内にあることを知り、「どうせ行くならその舞台に行ってみよう!」と、それがきっかけで選んだようなものなので、要は漫画の聖地巡礼的な感じです。
こうして書いてみると本当どうしようもない上に、よくそれで歩いたなと今は思っています。
しかし、ここからが大変で、12年前の熊野古道は外国人を筆頭とした、歩く為に来る人が少なかったようで、情報なんて千葉に住んでいる私には調べてもほぼ何も出てこなく…本屋に行っても売っている本なんて1冊ぐらい。
「行けばなんとかなるさ~。」的な旅行にするにはやりたいことが危険だと思い、観光案内所に何度電話をしたかわかりません。一つのことを調べるのに、PCで一日調べても納得できる具体的な情報が出てこない。
「世界遺産になっているのに何なのここ???」
と言うのが最初でした。出発前に選んだことを後悔しました(笑)
それでも頑張って最低限の資料をそろえ、宿を予約し、やってきた初めての熊野エリア(ちなみに2月の閑散期)。
新宮市から田辺市の本宮大社を目指しました。
その道中で、地元の方にお弁当のおにぎりを手作りのめはり寿司と交換してもらったり、おばあちゃんにみかんをもらったり、先に歩いていた地元のグループの方が、山から私が降りて来るまで待っていてくれて温泉宿まで車で送ってくれたり、泊まった温泉宿の女湯になぜかおじいちゃんが入っていてなかなか入浴できなかったり…など、いろんな方といろんなことがありました。
聖地巡礼だ(漫画の)!なんて歩き始めた道のり。
峠を越えたらまた峠。
山道や時には舗装路を登っては降りるのをひたすら繰り返し、本宮大社を目指します。
最初はあまりに険しすぎて、チョイスしたことをひたすら後悔しました。
そんな中で、出会う人に助けてもらったり優しくしてもらったり…そういった経験が、歩いているうちにいつの間にか自分の人生の様に感じていました。
そして、何も変わらないであろう、見渡す限り峰々が連なる熊野の自然や、それでも残っていた熊野古道という道に、歩いているうちに圧倒されていって、歩きながら自分の悩みや考え、存在そのものがすごく小さいように感じました。
何が目的で歩き始めたなんてことも忘れて、一日中黙々と山道をひたすら歩く。
一人で歩いていただけに本当にいろんなことを考えさせられました。
本宮大社についたときは、足は血豆だらけ。体中筋肉痛で満身創痍でしたが、込み上げてくる達成感と、圧倒的な何かに感動で泣きました。歩いている間にちっぽけに思っていた自分がやり遂げられたことに感動したのかもしれません。
そして、当時は歩いて一人でやってくる観光客など少なかったようで、観光バスで回っていた方々に囲まれ、質問攻めにされました(笑)
ゴールについたときの達成感と、憑き物が落ちたかのようなすっきり感は、たぶん一生忘れられない気がします。
リフレッシュと言うにはもったいない、いろんなものが自分の中でリセットされた瞬間だったのでした。
(つづく)