ワイルドライフ

カナディアンロッキーでキャンプをした時、そのキャンプ場に

   〝You are in bear country″（あなたが熊の国に居るのです）

と看板に書かれていたのが印象的でした。熊が人間界に来たのではなく人間が熊界に来たのだから熊ルールを守れ、ということです。

龍神村にも野生動物はたくさんいます。熊の目撃情報があった時には村内放送も流れます。

先日、埼玉―東京で鹿が出たと話題になりましたが、山奥では鹿はとても身近な存在です。もちろん、移住当初は珍しくて珍しくて、見かけるたびに喜んでいました。

時期によっては小鹿がいたり、夜の道沿いはそこらへんで眼が光ったりします。自宅裏の原っぱにも来るのでしょう、寝ていると鹿の咀嚼音（そしゃくおん）なのか、唇がブルブル鳴る音まで聞こえてきます。そして原っぱは鹿のフンだらけです。

畑の農作物を食い荒らす害獣であることも忘れてはいけませんが、やはりまだ可愛いなと思ってしまいます。

しかし、鹿をなめてはいけません。龍神に住んでいてよく耳にするのは「鹿と車がぶつかった」事故の話です。

特に夜、国道沿いまで出てきて草を食べています。
車にびっくりして車道に飛び出してくる場合もあります。
一頭でなく数頭で走り去って行くこともあります。
車のヘッドライトに驚き立ちつくしてしまう鹿もいます。

龍神村を通る国道にはほとんど信号がありません。昼夜問わず、かなりのスピードを出して走る車も多いです。もし、鹿と衝突したら・・・鹿は無事でも車は大破、衝突のスピードによっては運転手の命も危ういかもしれません。

山奥では携帯の電波が届かない場所もたくさんありますので、道沿いで光る眼を見つけたときは私もスピードダウンして運転しています。

ところで皆さんは鹿の警戒音を聞いたことがありますか？龍神に住んでから時々聞こえる「キッーキッー」というエコーの効く甲高い声が謎で、のちにそれが鹿の警戒音だと知りました。

昼間は鹿の姿を見ることはないのですが、最近何度か昼間に裏山から鹿の警戒音が聞こえたのです。

夜や明け方に聞くことが多かったので昼間に聞こえたときは珍しく思い、思わず撮影してしまいました。

裏山にいるのは鹿だけではありません。

朝、ゴミ捨てで裏山の下を通ったときに目線を感じて見上げてみるとカモシカと目が合いました。ウリ坊が転がって落ちていたこともありました。都会ではなかなか経験出来ません。

裏山には『けもの道』が存在します。鹿や猪が通る道です。ある晩、外に出ると「ガサガサガサーーーー」と暗闇の中、猛獣が攻めてくるような恐ろしい音がしました。

が、シカでした。

そして、猿。

移住当初、3歳になったばかりの息子は保育園から帰宅途中、車の中から猿を見つけてこう言いました。

「おかしいよねー。おさるさんは動物園にしかいないのにねー。」

そうですよね、東京から引っ越してきたばかりの息子にとって保育園の帰り道に猿に出会うなんてとてもおかしなことだったのでしょうね。

また猿について、近所のおばあちゃんから教えてもらったことがあります。

「猿が山から下りてきた次の日は雨が降る」ということです。

猿の天気予報は的中率が高く、晴れの日でも国道沿いに集団で居たり、民家のある所へ下りてきたりした翌日は雨の日が多いです。

山で暮らす人々の知恵からくる言い伝えですね。

先日は迷い犬捕獲用の檻の中にキツネが入っていたと聞きました・・しかも二度も。

クマ、キツネ、アナグマ、シカ、サル、カモシカ、イノシシ、テン、トンビ、フクロウなど・・龍神村に住んでいるということは、多くのワイルドライフと共存しているということ。

もしくは「私たちが野生動物の国に居る」と思いながら生きていったほうがいいかもしれませんね。