私にとっての熊野古道の魅力 ~後編~

Writen by 並木 真弓さん

12年前初めて熊野古道を歩き、歩く過程で自分がリセットされていく体験をしました。

すっかり熊野古道がお気に召してしまった私ですが、仕事が忙しく、その後なかなか行くことは叶いませんでした。

しかしながら、その時に「ここに住んでみたい!」と思った私は、以降、今住むところと違うところに住むならと言う話題で「和歌山!」と答えるくらいに気に入ってしまっていたのです。

そして、10年以上の月日を経て田辺に住むチャンスがやってくるのですが、この決め手になったのも熊野古道だったのでした。

自分の仕事について、年齢について、続けるのか新しいことをするのか…動くならもう決めなくてはと思ったときに、やっぱり和歌山に住みたいなと思ったのですが、決断できずにいました。

そんなときに「熊野古道の残り半分を歩いて、それで決めよう」と唐突に思いました。

そんな時は不思議なもので、アッという間に休みが決まり、思い立って1か月もしないうちに一人でリュックを背負って紀伊田辺の駅に降り立っていました。

今度は紀伊田辺から本宮大社を目指します。

季節は同じく冬。この年は寒波の年で、山には雪も見受けられる中、また一人黙々と歩きました。

峠に次ぐ峠。人生もまた登ったり降りたり。

きっと移り住めればその時は頂上。きっといろいろあって下りもあるのだろう。でも、きっと頑張っていれば登りもあるはずと思いながら。

泊まらせて頂いた宿などで、「そんなに住みたいなら住んじゃいなよ」などのなにげない一言も背中を押してくれました。

本宮大社へ着いたときは「やっぱり住もう!」と決心しました。

その決心が引き寄せてくれたのか、ご縁が続き、今この場所に住んでいます。


私にとっての熊野古道の魅力はなにか?

それは迷ったとき…いろいろなことに心が疲れた時…リセットしたいと思ったときに歩きたいと思う道なのであろうと思います。

そして、この感覚は一人で黙々と歩いてみないとわからないんじゃないかな…と思ったりもします。

移り住み、滝尻王子でたくさんの観光客やガイドさんなど様々な方と知り合い、同じような思いで好きと言ってお話ができる方もたくさんできました。

びっくりするのですが、皆さん同じようなことを言います(笑)

もちろん歴史やロマンに魅せられて好きとおっしゃる方も非常に多く、そんな方のお話はとても勉強になります。

移り住んでみたら、そんな思い出の道が思いっきり身近になってしまい、今度は友人たちと軽装備で歩ける楽しさや、気分転換にちょっとだけかいつまんで歩くのが楽しい毎日です。

そんな、かいつまんで歩く楽しさは、現状あまり情報として載っていないのではないかと思っています。

外国人観光客がたくさん訪れていたこの熊野の地ですが、休みが短く、長期休暇の取得が非常に困難な日本に住んでいる方には、来るには非常にハードルが高い観光地であることも実感しました。

歩きたいと思っても、歩けるだけの休みを確保してこないと歩けない熊野古道(笑)

現在はそれが現実かなと思います。

新型コロナにより、今現在、私のいる中辺路では観光客を見かけることが減りました。

スタート地点とされている滝尻王子前も、6月にお店を開けてからもあまり歩く人を見かけません。

そんな中で自分ができること…日本人のお休みに合わせた自分がおススメしたい熊野古道について、いつか歩きたいと思うきっかけ作り。

そんな話もまたこちらに書いていきたいと思うのです。


私がこの時歩いたのは熊野古道の中辺路というルート。

和歌山にはまだまだたくさんの熊野古道があります。

もっといろんな場所へ、いろんな道へ出かけて行きたいと思っています(田辺じゃないところも多いので、ここで書いていいのかわかりませんが笑)。

この記事を書いた人

並木 真弓さん

千葉県から熊野古道が好きすぎて地域おこし協力隊として移住。住んでるからには、真剣に取り組まずゆるゆる歩きたくて、いろんなコースを模索中。野菜を育てたいが、マメでないので毎回うまく育たないのが悩み。最近やってみたいことは、適当な装備で楽しめる地味キャンプと釣り。