大家さんは大忙し ~前編~

Writen by さとこさん

以前『「がんたろうさん」はどちらの太郎さん?』で山奥あるある生き物問題についてお伝えしました。
(まだお読みでない方は是非ご一読ください → https://tanagokochi.jp/article/272/

もうご存知の方もいらっしゃると思いますが、うちには三種の神器があり、突然の生き物の襲来に応戦できるグッズが置いてあります。

今年の6月のある晩、天井から私の布団にパサっとムカデが降ってきました。噛まれずに済みましたが、どこからどうやって侵入したのか不明で、恐怖のあまりついに蚊帳を買ってしまいました。

しかし、9月末からすでに羽毛布団を出した龍神の生活。さすがにムカデも活動が鈍くなる季節。蚊帳は来年までしまおうか迷っています。

カタツムリの赤ちゃん

さて、8年前私たちが今の家に引っ越して来て初めての6月、ツバメのご夫婦が玄関先に巣を作りました。

以降、3つの巣が作られ毎年のようにやってきます。

私はツバメとは縁のない人生でしたので、彼らがどのように巣を作り子育てしていくのか全く知りませんでした。

うちの物件は大人気で、毎年、6月上旬になると内見をしに複数のツバメがやってきます。

巣は3つありますが、1夫婦以上が同時に営巣することはありません。

抽選に当たったのか、毎年同じご夫婦なのか分かりませんが、ツバメのご夫婦はすでにある巣を補強するために泥や枯れ草をペタペタと付けていきます。ですので、玄関の下に泥や枯れ草が落ちていると「あ、ツバメさんが来る時期になったなぁ」と暖かい気持ちになるものです。

そのうち、人間が玄関を開けて巣の下を通ろうとも、一羽は微動だにせず巣から離れない時期がやってきます。それは抱卵が始まった証拠です。2週間ちょっとで孵化し、その後も1週間ほどヒナを保温するために親鳥は巣から離れません。

朝玄関を開けるときは「おはよう」と声をかけます。ツバメはクビをかしげる感じで私の様子を上から見つめてきます。

毎年、何羽うまれたのだろうかと楽しみにしています。


今年もいつものようにご夫婦がやってきました。孵化して数日、6羽のヒナの姿が巣の下からも見えるようになりました。

しかし今年はなんだかいつもと違う感じでした・・

ツバメの子育ての時期、雨が多く、嵐になることも多々ありました。

1か月間雨が続き、親鳥も突風に吹き飛ばされながらも懸命にエサを探しに飛んでいました。

そしてある日、6羽のヒナが忽然と姿を消したのです。

まだ産毛が残っていたはず・・

まだ飛べないはずなのに・・

でも、もしかしたら急に巣立ちしたのかもしれないと楽観的に考えていました。

その数日後、再びさとこさんちの大人気物件にご夫婦がやってきて前回とは違う巣で子育てを始めました。

6月下旬、3羽のヒナがピーピー元気に鳴いています。

両親は雨にも負けず風にも負けず、せっせとエサを運び続けます。

3羽のヒナ

6/30。

ステイホーム中で暇だった私は屋内から何時間もツバメの様子を見ていました。

見ていて一番関心したことは、親鳥はヒナが排泄しようとする瞬間にナイスキャッチをして口にくわえて遠くに運んでポトンするのです。

その後、ある程度大きくなるとヒナが自分で巣の外にお尻を出して下にポトンするのです。つまり、巣の中を全く汚さないのがツバメなのです。

でも巣の下、そう、うちの玄関はカオスです。人気物件の大家さんは掃除が大変です。

たまに巣から落ちそうになり必死にパタパタと羽を動かしている姿を見るとドキドキします。

このあたりから親鳥は、夜は近くの山へ寝に帰り、巣にはヒナたちだけになります。

そんな暇で穏やかな日のはずだったのに!

その日の夕方

雨が降りしきる中

親鳥の尋常でない鳴き声が!!

急いで玄関に出てみると、なんと1メートル以上はある青大将が外壁をのぼっているではありませんか!

あと20センチ体を伸ばしたら完全にヒナに届いていたギリギリのところでした。

信じられない!

レジデンスの大家である私はレジデントの家族を守るべく、勇敢にも傘を手に取りエイエイとツンツンしてなんとか蛇を下に落とすことに成功したものの、その後どうしたら良いのか分からず、ご近所さんに助けを求めました。

近所には野生動物や生物に精通した方々が多くおられるので頼りになります。その方は青大将を素手で掴み獲り、裏山の方に逃がしに行ってくれました。

ツバメの親鳥の尋常でない鳴き声。。それは大家に危機を知らせる声でした。この日から私のSNS上では「信じられない」シリーズの投稿が始まりました。

7/2。

朝玄関を開けてみると信じられないことに、巣が落とされていました・・

下に散らばった泥には何やら擦った後が。。数日前から近所のネコがよく来ていたのでネコを疑いましたが、流石にジャンプしても届かない場所になります。ネコの足跡も残っていませんでした。

ヒントになるのはこの細長い擦った後・・もしや先日の蛇なのでは??

幸いなことに落とされた巣は3羽のいる巣ではなく、前回忽然と消えた6羽の巣の方でした。

ここで確信したのです。6羽は巣立ったのではない。蛇に食べられたのだと・・

そしてその蛇は数日前に現れたあの青大将なのだと。

今年、村内で蛇にツバメの巣がやられたという話をたくさん聞いていました。。

この日から大家と蛇の知恵比べの幕が切って落とされたのです。

上れないと思っていた外壁を這い上がれると知ったからには上らせなければよい。

ネットでいろいろ調べてビニールを下から張ってヘビホイホイを作ってみたり、木酢液の匂いが苦手と聞けば木酢液を玄関先に毎日撒いていました。

また、鼻が利く蛇対策としてフンの掃除は頻繁に行っていました。

同じ日、息子の自転車のハンドルにドロバチが巣を作りかけていていたのを見たときは本当に信じられなかったです。

ハンドルに巣を作るドロバチ

そしてその時はやってきました。

7/3。

この日も朝から雨。夜までシトシトと降り続いていました。

蛇は涼しくなった夕方、親鳥もいない巣を狙いに来るはず。夕方は10分おきに巣を見に行きました。

不気味でジメジメしたその夜。

私の知らない所であの青大将がジリジリと静かに巣に近づいていたのです・・ヒナはスヤスヤと寝ている最中に。。

つづく

この記事を書いた人

さとこさん

埼玉県出身。3年間の海外生活以外は実家を出たことがない。 子供英会話講師など英語に関わる仕事を続けて、友人の紹介でテレビ番組の翻訳業務に就き、テレビディレクターである今の夫と結婚。東京でのママ生活を満喫していた。ところが、2012年夏、夫の「龍神村へ移住したい」の一声で当時2歳の息子と3人の移住決定。今は長女にも恵まれ、親族も友達もいなかった関西の、しかも山奥での私の暮らしが続いている。