山奥に連れてこられて〜後編

Writen by さとこさん

ムカデを素足で踏んでも叫ばず冷静を保てるようになったさとこさんです。
みなさまごきげんよう。
今年のツバメの雛も蛇にやられてしまいました。新しくお隣さん宅に作られた巣でスクスク育っていたツバメの雛もやられてしまいました。。
良い蛇対策がございましたらご指南頂きたく存じます。
今年のツバメストーリーはまたオリを見てお話ししたいと思います。

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前回の「山奥に連れてこられて〜前編」の投稿から数ヶ月経ってしまいました。このコラムを読んだ夫の凹みの様があまりにも酷く、早く後編を書き上げて盛り上げなくては!と焦っている次第です。

移住して数年間は疎外感を感じるほどネガティブだった私。
そんな私が
「自分の居場所の確立」
「楽しいことは自分発信で」
「都会との違いを楽しむ」
ということを通じて、今や『龍神大好き!』に(いつの間にか)なっていた、というお話をしたいと思います。

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私にとって(自分の居場所の確立)はとても大切でした。「居場所」があることで自己肯定できたりリラックス出来たり、自分のままで居られたり。
当時、私が大きく変わることができたのは自分に似た境遇の女性に出会えたことがキッカケでした。
偶然にも同じ保育園に大阪から龍神に嫁いできた同年代のママさんがいました。 
彼女を通じてカフェや美容院などを紹介してもらったり、知り合いを紹介してもらったりするうちに、「自分の居場所」を確立していくことができました。
そして気がつけば周りに気軽に話せる友達ができていました。私は「友達」=「自分の居場所」だったのでしょう、自分の居場所がたくさんあることは安心感に繋がりました。
同様に重要だったのが、龍神の地元の方々が他府県から来た人間を受け入れてくれるということでした。 
もしかしたらそれだけではなく、自分から「都会の香りが消えた」のかもしれません。
地元の方からしたら「話しやすくなった」となるのかもしれません。

以前は「〇〇さんの奥さん」と呼ばれる方が多かったですが、今は「〇〇さん」または「さとこちゃん」と直接呼ばれるようになりました。
私自身、これを感じるようになったのは7年かかりました。移住妻にとって、「自分の居場所」をもう一度作らなければいけないのが一番大変なのです。

これを聞いて「移住、案外難しそうだな」と感じた奥さま方もいらっしゃると思います。

確かに、田舎だから、人口が少ないのだからと人間関係が簡単ということは絶対にありません。むしろ濃密で歴史があるからこそ難しい部分があります。
人とのかかわりが苦手だから、都会の人間関係に疲れたからと田舎に逃げる感覚でしたら移住生活はつらいものになってしまうかもしれません。

東京のマンションでは隣人がどんな人かも知りませんでした。しかし田舎は人間関係が濃い。

その分、助けられる部分もたくさんあります。お野菜などもらうのは日常茶飯事。

子供も地域の方の顔や名前を知っている。逆もしかり。今までは助けられるばかりでしたが気がつけば私自身が地域を見守っているという立場になっています。

移住妻になって9年目。はっきり言っていまだに手探りです。
子供が喘息の発作が出たら片手を上げて止められるタクシーもない。自分で峠を1時間運転して病院に連れて行かないといけない。不安でも頼れる親族はいない。
ペーパードライバーだった私は今や山道の運転も慣れたものです。

移住してみたが合わない方には合わない、そういうのも当たり前にあると思います。けれど、もしそれが最初の頃の私のように「自分の居場所」が見つからず苦しいだけなのかもしれません。

また移住を考えている方は移住先見学は夏だけでなく冬や春の気候・環境も考慮したうえが良いと思います。
杉ヒノキだらけの龍神で私は花粉症が本当にひどくなりました。あとは車の運転が出来ないと生活に支障をきたすということを知っていただきたいです。

「楽しいことは自分発信で」については、私の考えなのですが、
『都会生活の娯楽は受動態』-すでにあるものを楽しむという感覚。
『龍神生活の娯楽は能動態』-自分で作り出すという感覚。

娯楽だけでなくモノも手作りという人も多いです。欲しいものが手に入らないなら作れば良い、という感覚です。

私が「居場所の確立」兼「楽しいこと」の為と、「私ってこんな人なんだよ」と知ってもらう事として移住後すぐに始めたことはハロウィンパレードです。子供英会話講師の経験を生かしながら毎年、我が子達とそのクラスメイトに声をかけて仮装して村内を練り歩きtrick or treatをするのです。最近ではお母さん方も巻き添いにしています。
龍神村内で仮装して歩いていると車からクラクションを鳴されるほど注目されます。

私は今でも埼玉の地元や東京が好きですし、昔からの友達と会ってしゃべるのが楽しくて仕方ありません。それは自分の素直な気持ちですが、同様に龍神・田辺の生活も心から楽しんでいる自分もいます。こちらの友達とおしゃべりするのも楽しいですし、川遊びや、星の観察、家の目の前にある温泉、海釣りを楽しんでいます。
今後は熊野古道歩きなど新しい「楽しいこと」にチャレンジしてみたいと思っています。

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最初はネガティブばかり目についていましたが、今はネガティブと感じていた事を「違いを楽しむ」として認識して楽しくなった気がします。

たなごごちという田辺や龍神村を紹介するライターをさせて頂く中で、都会生活と龍神生活の比較をすることが楽しいと思い始めました。

私の「違いを楽しむ生活」は過去に「たなごごち」に書かせてもらっているので機会がありましたら読んでいただけたらと思います。

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全く知らない土地に移住するということはそれなりにいろいろあります。龍神の移住者はその方にとっての壁を乗り越えて今を過ごしている方がほとんどなのではないかなと思います。どこに住んでいようが壁はあるでしょうし、私が東京に住んでいてもきっといろんな壁があったのだろうと思います。

ただ、龍神村では「龍神に来てくれてありがとう」と言われることが多いです。
東京では「東京に来てくれてありがとう」とは言われないですね。

ありがとう、なんて言ってくださる方が多い龍神村はとても気持ちのいい村です。

この記事を書いた人

さとこさん

埼玉県出身。3年間の海外生活以外は実家を出たことがない。 子供英会話講師など英語に関わる仕事を続けて、友人の紹介でテレビ番組の翻訳業務に就き、テレビディレクターである今の夫と結婚。東京でのママ生活を満喫していた。ところが、2012年夏、夫の「龍神村へ移住したい」の一声で当時2歳の息子と3人の移住決定。今は長女にも恵まれ、親族も友達もいなかった関西の、しかも山奥での私の暮らしが続いている。