波乱万丈つばめの子育て

Writen by さとこさん

この夏も埼玉に帰省ができず、子供達は祖父母に会えず悲しみに浸っております。
いつになったら会えるのでしょうか・・この世にあの青い方のポケットから出てくる、かの有名なピンクのドアがあったらいいのにな、と心底思います。
それでも山奥に住んでおりますと、東京のマンションのベランダには置けない大きさの裏庭プールで遊べたり、夫作のテーブルでなんちゃって卓球をしたりと子供達は午後のひとときを楽しむことができます。

さて、3月中旬、今年もつばめのご夫婦がいらっしゃいました。東南アジアから3〜7千キロも飛んでやってきてくれたのですね。つばめのご夫婦はすでにある巣を補強し、夜になると二羽で巣で過ごします。

ご夫婦

家の近くには山もあり草むらもあるので、私は毎年、抱卵が始まる前から蛇対策をします。写真でもおわかりいただけるように、うちは木材がたくさん使われていて蛇がとても登りやすいので、ビニールを取り付けて登りづらくしたり、ガムテープを巻いて「蛇ホイホイ」なるものを作ります。木酢液も撒いたり、蛇忌避剤を置いたりもします。

つばめは一日に1個卵を産みます。例えば6個産んだなら6日かかるはずです。でもメスは1個目から抱卵を始めるわけではなく、最後の卵を産むまで抱卵は始めません。なぜなら孵化するタイミングを合わせて巣立ちの時期を同じにすることが大事だからです。

4月末、割れた卵の殻が落ちていて、孵化したことを確認しました。5月初め、6羽の雛の姿を確認しました。去年とは違い嵐がない梅雨で晴れの日が多く、おかげで庭のラベンダーも綺麗に咲きました。。

5/17、朝から嵐でした。嫌な気がして朝イチで玄関を見に行くと、2羽の雛が落ちて死んでいました。巣も少し崩れていました。残りの4羽はどこに行ったのでしょう。私が嵐のなか周辺を探していると親つばめが私の頭上を飛んでいました。そして、近くにあるオブジェの枝に1羽止まり、もう1羽は私をそこに導きます。大雨の中、傘もささずに近づいてみるとそのオブジェの下に雛がびしょ濡れの状態で震えて立っていました。そこも草むらで水も溜まっていて危険な状態だったので私は雛を捕まえようしました。しかし雛は驚いてしまい、巣立ちも近かったこともあり、1メートルくらい飛んでしまいました。そこに突風が吹き、雛は吹き飛ばされてしまいました。飛ばされた方向は国道があります。雛は住宅街と国道の境にある緑のフェンスに激突しひっかかりました。住宅側から近づけば雛は国道側に逃げると思ったので、国道側から近づくと住宅側に落ちて逃げました。親も心配そうに私の頭上を飛んでいます。でも私に攻撃はしてきません。
やっとの思いで雛を捕まえました。タオルなどは持っていなかったので長袖の袖を伸ばしてそっと抱き上げました。雛は震えていました。
家に戻り、一度近くにあった籠に避難させ、脚立と軍手を用意し、夫を呼び、巣に戻してもらいました。親つばめは雛が巣に戻ったことに気がついていないようで、最後にいた場所をずっと探しているようでした。そのうち、親が巣に戻ってきて雛を確認すると、餌やりを始めたので安心しました。
蛇だったのでしょうか。。巣が小さくて崩れて落ちてしまったのでしょうか。。他の3羽は捜索の甲斐もなく行方不明のままです。もしかしたら3羽は上手に飛べたのかもしれない、、と信じたいのですが。。

翌日、朝から晴れて、親つばめは忙しく巣の周辺を飛びます。どうやら巣立ちを促しているようです。午後、同じように親が鳴きながら巣立ちを促すと、ついに雛が飛びました。重そうに、不器用に。でも、親鳥を追いかけて近くの電線に止まるのをみると、私は思わず拍手をしてしまいました。

5/28、同じメスつばめが抱卵を始めました。何度か別のつばめのご夫婦が内見にきましたが、彼らの入居を許さず、うちを2度目の子育ての場と選んでくれたようです。
しかし、6/19忽然と雛が消えました。巣の下には巣の泥が少し落ちていました。そして、親つばめ1羽は巣に戻るも絶対に巣には止まらず、警戒音を発しながら巣の周りを飛びUターンして出て行くというのを何度も繰り返していました。普通ならご夫婦2羽の姿が見れるはずなのに、1羽(多分オス)しか飛んできません。その日は1時間おきに飛んできたオスですが翌日からは来なくなりました。
メスと雛に何があったのか・・あれだけ警戒心の強い大人のつばめでも蛇にやられることがあるのか・・謎のまま、そして悲しみだけが残る今年のつばめの子育ては終わりました。

7/11、私が玄関先で作業をしていると、1羽のつばめが飛んできました。かなり近い距離で頭上を旋回していたので「どうしたの?」と声をかけると近くに止まりました。ずーと止まっているので私もずーっと見ていましたが「バイバイ」と声をかけて家の中に入ろうとしたら「ピチュピチュ」と一声鳴いて飛んで行きました。
今年唯一うちから巣立った子なのか、親つばめなのか・・
ああ、団体生活を始めるためここを離れるからサヨナラを言いにきたのかな、なんて考えると暖かい気持ちになり、また来年も来てくれたら良いなと思ったのでした。

この記事を書いた人

さとこさん

埼玉県出身。3年間の海外生活以外は実家を出たことがない。 子供英会話講師など英語に関わる仕事を続けて、友人の紹介でテレビ番組の翻訳業務に就き、テレビディレクターである今の夫と結婚。東京でのママ生活を満喫していた。ところが、2012年夏、夫の「龍神村へ移住したい」の一声で当時2歳の息子と3人の移住決定。今は長女にも恵まれ、親族も友達もいなかった関西の、しかも山奥での私の暮らしが続いている。