これが春ってことなんだ

Writen by さとこさん

先日、近所のおばあちゃんが亡くなりました。
前日までお元気で、畑の大根を頂いたばかりでした。
今の家に引っ越して以来、とても良くしていただき、おばあちゃんから多くのことを学びました・・「猿が山から降りて来たら翌日は雨」とか、「ぜんそく」が「でんそく」になるから聞き取りに気をつけようとか、気づかせてくれたのも、おばあちゃんでした。
私にとって龍神で唯一の「おばあちゃん友達」。。きっと東京に住んでいたら「おばあちゃん友達」なんていなかっただろうな。
・・号泣しました。おばあちゃんには「ありがとうございました。」と何度も言ってお見送りしました。

去年の12月、娘とおばあちゃんとで畑にいた時、私たちの頭上を「ピーピー」と、けたたましい声で鳴きながら飛ぶ大きな猛禽類がいました。おばあちゃんは「おとろしよー」(恐ろしいよ)と言い、こんな鳥は初めて見る、と言っていました。
私ももちろん初めて見る鳥で、大きさ・鳴き方・色、からしてトビでもないし、なんだろうと思っていました。
この猛禽類がクマタカと分かり、これがきっかけで、鳥類に興味を持ち始めました。。


それ以来「野鳥観察」は私の素敵な趣味になりました。
人生でこんなに空を見上げて過ごしたことはあるだろうか、と思うほど毎日外に出て、首が痛くなるほど山を見上げ空を見ています。そして鳥たちの声に耳を傾けています。
だからこそ知り得たことがあります。啓蟄を迎えたら本当に虫が増えるんだ!ということや、鳥たちがその虫を空中キャッチ喰いするんだ!、鳥の鳴き声が変わるんだ!ということなどです。
「ああ、これが春ってことなんだ!」と新しい感覚で春を感じることができました。

春告鳥と呼ばれるウグイスがホーホケキョと鳴くと、春が来たなぁと思います。ホーホケキョが聞こえたら「あ、ウグイスが来たから春だね」なんて発言しちゃいますけど、実はこれは大間違いで、ウグイスは一年中います。ただ、春以外は地味にチャッチャと鳴いていて、ホーホケキョと鳴かないだけ。
このホーホケキョは「さえずり」と言って、オスの縄張り宣言であり、恋愛モードにシフトチェンジした証拠です。千載一遇のチャンスとばかりのホーホケキョです。メスからしてみれば「ホーホケキョってアナタが言ったから今日は恋愛スタート記念日」なのです。

私は毎日、双眼鏡を首にかけて、望遠カメラを持って裏山の麓を歩きます。40過ぎの私には、双眼鏡や望遠カメラを覗いたあと目のピントが中々戻らなくて苦労しています。
山で鳥が出す音(鳴き声や餌を探す音)に耳を傾け、目の前の鳥を双眼鏡で覗いて、時には猿の声を聞いて「明日から天気崩れるんだな」とか思ったり。。目の前で「今」起こっていることに全集中します。時には息を止めて撮影に挑みます。

山奥に住んで10年。趣味らしい趣味を持たずに来ましたが「野鳥観察」の楽しさを知ってからは、「野鳥」への興味を持っていなかったこの10年がもったいなく思えます。
この冬から野鳥観察を楽しむようになり、春を迎えた今、鳥たちの鳴き方や行動の変化を観察することを子供と共に楽しんでいます。せっかく山奥に住んでいるのですもの。

この記事を書いた人

さとこさん

埼玉県出身。3年間の海外生活以外は実家を出たことがない。 子供英会話講師など英語に関わる仕事を続けて、友人の紹介でテレビ番組の翻訳業務に就き、テレビディレクターである今の夫と結婚。東京でのママ生活を満喫していた。ところが、2012年夏、夫の「龍神村へ移住したい」の一声で当時2歳の息子と3人の移住決定。今は長女にも恵まれ、親族も友達もいなかった関西の、しかも山奥での私の暮らしが続いている。