我が子、小家っ子になる
久しぶりの投稿になります。皆様お元気でお過ごしでしょうか。
龍神の山の杉たちは花粉を飛ばす準備をしており、(もしくはもう飛ばしている)春が近づいていることを教えてくれます。それでも朝起きると雪が積もっていたりとまだまだ寒い龍神村です。

先日15歳になった息子は、龍神で13年間過ごしました。そんな息子は0歳の時から鉄道が大好きだったので、東京では電車を見ながらお散歩したものです。
自転車で大井車両基地までドクターイエローを見に行った日の事も思い出します。電車もない山奥に引っ越してきて寂しい思いをしていた息子。
この春、中学を卒業します。

そんな息子に大変驚かされたことがありました。昨年の秋祭りの時です。
祭りの数週間前になると各地区で神輿に付ける花を作ったり太鼓や笛の練習(ならし)を始めたりします。「ならし」の時期になると多くの子供たちは遅くまで集会所で特別な夜を過ごすため浮き足立ちます。ただ、うちの子供達は「ならし」に積極的に参加をしたことがありませんでした。下の子が喘息持ちだったため寒い夜に外出することを控えていたり、コロナ禍があったりと様々な要因があったかと思います。そのため、息子も娘も太鼓・笛は全く出来ないでいました。
ところが「ならし」に参加してこなかった息子が宵宮当日、笛を上手に吹いていました。笛を吹くため自然と太鼓の周りにいる時間が増えます。
そんな中、地区のおじさまから声がかかったのです。「太鼓、叩いてみるか?」と。
「まあ、神様の前で叩くのは無理でも、ちょっと触らせてもらったらいいじゃん。」なんて思っている間に息子が太鼓を叩き始めました。
おじさまは小太鼓、息子は大太鼓。周りにいた人がおもむろに笛を吹き始めます。
・・完璧でした。
「え?いつ練習してたの?」と聞くと「イメトレしてた。」と一言。
大太鼓はただ叩くだけでなく、小太鼓と笛に合わせなくてはいけません。笛のリズムが体に染み付いてやっと大太鼓が叩けるとも言われています。しかも私たちの住む地区の「小家神楽」は複雑な一つの長い曲になっています。それなのにそれをイメトレで!?しかもどうやら笛の音階は音ゲーで培った耳で耳コピしていたようです。
これなら上で叩ける(高い位置にあるお社のため)と、おじさまたち全員からお墨付きを頂くまでそう時間はかかりませんでした。
私はびっくりしました。「ならし」に出ても神前では上手な人が叩くというのが通例だったからです。息子も驚いた様子で、動揺していました。でもちょっと嬉しそうでした。
息子は県外の高校に進学します。息子にとって今年が「小家っ子」として最後の祭りになる為、地区の皆さんが気を利かせてくれたのでしょう。ありがたいことです。驚いたのは私だけでなく、おじさまたちも「なんで叩けるんやぁ、ワイは何年もかかったで。」と口々に笑って喜んでいました。
イメージトレーニングと音楽ゲームで鍛えたリズム感を武器に、息子が奏でる太鼓の音は、龍神村の秋の夜空に力強く響き渡りました。

私は二人の子供達に、いつか小家の法被を身につけて小家神楽を奏でてもらいたいと思っていました。娘もいつの間にか笛が吹けるようになり、願いが叶った秋祭りでした。

以前の記事「誇り高き法被でハッピー」でも私たちの住む龍神村小家地区の「小家神楽」について書いています。もし宜しかったらご一読ください。